「ミニロト」は買っちゃダメ?
今回のテーマは「ミニロト」です。01〜31という31個の数字の中から、自分で好きな5個を選び、200円でくじに換えます。後日発表される抽せん数字(5個)のうち3個以上を的中させれば賞金がもらえます。全部当てれば約1000万円。
前提知識
基本的には高校数学範囲の確率の知識を用いますが、一部高校では学習しない事項もあります。数式が理解できないと思ったら、適当に飛ばしながら読んでいただくほうがよいです。そうでないと嫌になること間違いなしですので。計算結果を見るだけでも十分だと思います。
なお、本文中で以下の記法を用います。
- n! = n×(n-1)×(n-2)×…×2×1 (階乗) 但し 0! = 1
- exは指数関数(eは自然対数の底 2.718…)
- nCx = n! / (x! (n - x)!) (順列組み合わせ)
「ロト6」と「ミニロト」
「ロト6」は、43個の数字から6個選び、3個以上当たれば賞金がもらえます。一方、「ミニロト」は、31個の数字から5個選び、3個以上当たれば賞金です。「ミニ」と付いている分、ちょっと手軽なイメージを感じますし、元の数字が31個しかないのですから、損も少ないような気がしますが、実際問題どうでしょう。これが今回扱う内容です。
さて、とりあえずミニロトの各賞を挙げ、それぞれの当たる確率を求めてみます。(2014/5/8:下線部に誤りがあったので修正)
- 4等(1000円)
- 選んだ5個の数字の中に、抽せん数字が3個あるとき。抽せん数字は5個あるので、ハズレ26個の中から2個、当たり5個の中から3個を選んでいればよい。
- その確率は 26C2 × 5C3 / 31C5 = 3250/169911 ≒ 0.01913 (1.913%)
- 3等(約1万円)
- 選んだ5個の数字の中に、抽せん数字が4個あるとき。抽せん数字と「ボーナス数字」を除く25個の中から1個、当たり5個の中から4個を選んでいると考える(ボーナス数字が出ると2等となる)。
- その確率は 25C1 × 5C4 / 31C5 = 125/169911 ≒ 0.0007357 (0.07357%)
- 2等(約15万円)
- 選んだ5個の数字の中に、抽せん数字が4個、そして抽せん数字とは別に1個だけ選ばれる「ボーナス数字」があるとき。ボーナス数字と、当たり5個の中から4個を選んでいる場合。
- その確率は 1C1 × 5C4 / 31C5 = 5/169911 ≒ 0.00002943 (0.002943%)
- 1等(約1000万円)
- 抽せん数字5個がすべて的中した場合。
- その確率は 5C5 / 31C5 = 1/169911 ≒ 0.000005885 (0.0005885%)
- ハズレ
- 上のどれにもあてはまらない。
- その確率は (169911 - 3250 - 125 - 5 - 1) / 169911 = 166530/169911 ≒ 0.9801 (98.01%)
いかがでしょうか。といってもよくわかりませんから、横に並べて比較してみましょう。ロト6のデータは「ロト6」の例のものを利用しました。
ロト6 | ミニロト | ||||
---|---|---|---|---|---|
等級 | 賞金 | 確率 | 等級 | 賞金 | 確率 |
1 | 100,000,000 | 1.640×10-7 | ? | ? | ? |
2 | 15,000,000 | 9.842×10-7 | 1 | 10,000,000 | 5.885×10-6 |
3 | 500,000 | 3.543×10-5 | 2 | 150,000 | 2.943×10-5 |
4 | 10,000 | 1.639×10-3 | 3 | 10,000 | 7.357×10-4 |
5 | 1,000 | 2.549×10-2 | 4 | 1,000 | 1.913×10-2 |
愕然としませんか?特筆すべきはロト6の3等とミニロトの2等でして、前者のほうが賞金が高いのに当せん確率も高いという。ロト6の4,5等とミニロトの3,4等は、賞金額はほぼ等しいですが、確率はロト6のほうが上です。ミニロトの1等はロト6の2等より確率が高いですが、賞金額が低いのですから当然です。それに、こんなに小さい確率で高いも低いもありません。(^^;;
そういうわけで、「ミニロトは買っちゃダメ」という理論が成り立つわけですが、理論は理論であって、実際に調べてみることが重要です。ここまで一方的では調べるまでもないかもしれませんが。
中央値を調べる
ロト6のときにも使った「中央値」を考えてみましょう。比較対照のため、ロト6のときと同じ「50口(1万円分)」の場合で考えてみます。今回は、前回扱った「ポアソンの小数の法則」をいきなり用いることにします。この法則をおさらいしておきますと、確率 p で起こる事象が、n 回の試行の中で x 回起こる確率は、n が大きく、p や x が小さいときは
- λ = np とおけば e-λλx / x!
と近似されるというものでした。指数関数 e-λ の計算には、ロト6のときに使った「指数関数表」を利用することにします。
まずは、50口のロト6を買って1円も当たらない確率を求めます。何がしかの賞金が当たる確率は、(3250 + 125 + 5 + 1) / 169911 = 3381/169911 ≒ 0.0199?と求められますから、p = 0.0199, n = 50とすればよく、λ = np ≒ 0.995 として x = 0 (当たりが無い→すべてハズレ) の確率を求めてみます。
- e-0.995 × 0.9950 / 0! ≒ 0.371577?× (1 - 0.005) ≒ 0.370
というわけで、1万円分買っても1円も戻ってこない確率が37%もあるのです。「ロト6」では26%ほどでしたので、この点は明らかに不利です。
次に、1000円だけ当たる確率を求めてみますが、これも前回扱った「小数の法則」の拡張版を用います。n 回の試行に対し、同時には起こらない確率 p1, p2 の事象がそれぞれ x 回、y 回起こる確率は、n が x や y に比べて十分大きく、p1, p2 が小さければ、λ1 = np1, λ2 = np2?とおくことで
- e-λ1-λ2 λ1x λ2y / (x! y!)
と近似できます。ここでは、確率 p1 の事象を「4等が当たる」、p2 の事象を「3等以上が当たる」とします。その上で「3等以上0口、4等1口、ハズレ49口」の確率を求めればよいわけです。
- p1 = 3250/169911 ≒ 0.01913
- p2 = (125 + 5 + 1) / 169911 ≒ 0.000771
- n = 50
とすればよく、λ1 = np1 ≒ 0.9565, λ2 = np2 ≒ 0.0386 として x = 1, y = 0 となる確率を求めます。
- e-0.995?× 0.95651 × 0.03860 / (1! 0!)
≒ 0.371577?× (1 - 0.005)?× 0.9565
≒ 0.354
よって、1000円だけ当たる確率は約35%。「当せん額1000円以内」で既に50%を超えており、しかも70%にまで達しています。ここから、当せん額の中央値は 1000円 と求められます。ロト6と同じです。
ミニロトは儲かるか?
ロト6のときにもやりましたが、「50口買って元本を回収できる確率」を計算してしまいましょう。
1万円を回収するには、「3等以上は当たらないけど4等が10口以上当たる」か、「3等以上が1つでも当たる」のいずれかが必要です。この2つは両立しませんので、それぞれの確率を求めて足せばいいわけですが、前者は非常に低い確率(10-6%くらいの桁になります)なので無視してしまい、「3等以上が当たる」確率だけ求めることにします。
小数の法則で、p を3等以上が当たる確率 0.000771 とすると、n = 50 なので、λ ≒ 0.039 となります。全体から「3等以上が全く当たらない」という確率を引くことで、題意の確率が求まります。
- 1 - (e-0.039 × 0.0390 / 0!)
≒ 1 - 0.9608 × (1 + 0.001)
≒ 0.0382
ということで、確率は 3.82%。ロト6以上に「損をする確率が高い」といえるわけです。
結局
ミニロトは「ミニ」という響きから「手軽に買える」ような気もしてきますが、実際問題ロト6と比較しても良い所がなく、確率論的にはロト6以上に損をすることが見えています。「確率の話をしたら元も子もない、私は夢を買ってるんだから」と仰る方は、ミニロトを買うぐらいならロト6を買ってください(という確率の話ね。^^;;)。